INTERVIEWS

木村泰大

アニメーター・監督/執行役員

木村泰大 のプロフィール画像

PROFILE

木村泰大

アニメーター・監督/執行役員

『三者三葉』『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』『2.43 清陰高校男子バレー部』『うる星やつら』などで監督を務める。現在は『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』で髙橋秀弥と共同監督を務めるほか、クリエイターの育成や制作環境づくりにも取り組んでいる。

一人を育てて終わりではなく、次の世代へ

若手の成長を支え、アニメをつくる人を増やす

ご自身の経歴と現在のお仕事について教えてください。
アニメ業界に入ったのは2009年頃です。最初はアニメーションスタジオに入って、動画から始めました。そこから原画、作画監督を経験して、もともと演出志望だったので、3,4年目くらいから演出もやるようになりました。

自分の場合、いきなり監督を目指して一直線に進んできたというより、アニメ制作のいろいろな工程を経験しながら、少しずつステップアップしてきた感じです。 その後、フリーランスとして仕事をする中でデイヴィッドプロダクションとの縁ができて、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズに監督として参加するようになりました。

現在は監督として作品をつくる一方、デイヴィッドプロダクションではクリエイターの育成や制作環境づくりにも関わっています。
デイヴィッドプロダクションには、どのような印象を持っていますか?
一つ特徴的なのは、長い期間をかけてつくる作品が比較的多いことですね。

フリーランスとして1クールの作品を中心に仕事をしていると、今の作品をやりながら、同時に次の仕事も考えなければならないことがあります。その点、長期シリーズでは準備期間も含めて、一つの作品に長く関わることができます。クリエイターとしては、作品の世界観やスタッフと長い時間を共有しながら、腰を据えてものづくりができる環境だと思います。
若手クリエイターの育成については、どのような思いがありますか?
自分が特に必要だと思っているのは、将来的に演出や絵コンテまでできる人を増やすことです。

日本のアニメ業界には、動画から原画へ進む明確な道筋があります。でも、「どうすれば演出になれるのか」「どうすれば絵コンテが描けるようになるのか」となると、実は決まった方法がほとんどありません。

僕自身も、シナリオを渡されて「これでコンテを描いてみて」と言われ、描いたものを先輩に見てもらって、「こっちの方がいいんじゃない?」と言われて直す。そしてまた描く。その繰り返しでした。今も業界全体として、そういう部分はかなり残っていると思います。だからこそ、少しでも「学べる場所」をつくった方がいいと思っています。
実際には、どのように教えているのでしょうか?
人によって違いますが、多い人だと週に1回か2回くらい見ています。レイアウトだったら2、3カット持ってきてもらって、それを一緒に見ながらチェックする。1回のチェックに1時間から3時間くらいかかることもあります。

今はオンラインで見ることも多いです。本人が実際の仕事で描いているものを、画面共有を通じて「ここはなぜこうしたのか」「こうした方が意図が伝わるんじゃないか」と話していきます。

完成するまで一人で抱えてしまう人もいるので、そういう場合は「毎週この曜日に見せよう」と決めて、途中の状態でも見せてもらいます。全員を同じ方法で教えるのではなく、その人の性格やスピードに合わせるようにしています。

「なぜ、この絵を描いたのか」を説明できるクリエイターになってほしい

木村泰大 インタビューイメージ 1
若手に、特に身につけてほしいと思っていることは何ですか?
一番大事なのは、「なぜ、この絵を描いたのかを説明できること」だと思っています。

「なんとなく格好いいから」だけではなくて、
「このキャラクターにこういう芝居をさせたい」
「この場面では、この感情を見せたい」
「だから、この構図にした」
ということを説明できるようになってほしい。作品づくりは一人でするものではないので、自分が考えていることを相手に伝えなければいけない場面が多くあります。これは原画でも大切ですが、演出や絵コンテとなると、もっと重要になります。

絵を描く技術だけではなく、「何を表現するために描いているのか」まで考えられる人になってほしいですね。
その上で、やっぱりたくさん描くことも大切です。 昔と今では制作環境も違いますから、「何枚描けば原画になれる」といった昔の基準をそのまま当てはめることはできません。でも、たくさん描くこと自体には意味があります。たくさん描けば、その分だけチェックを受けて、フィードバックをもらう機会も増えます。その一つひとつが経験になっていきます。
もう一つは、自分の描いた絵を「捨てられる」ようになることです。作品全体を考えたとき、その絵が必要ないのであれば、捨てなければいけないことがあります。たくさん描いて、たくさん直される経験をすると、「これは使わない方がいい」と判断することにも慣れてきます。それもプロとして大事な能力だと思います。
若手のクリエイターには、将来どのように活躍してほしいと考えていますか?
できるだけ次のステップへ進んでほしいですね。そして、最も大事なのは、僕が教えた人が、今度はその次の人に教えてほしいということです。

一人を育てて終わりではなくて、育った人が、また次の人を育てる。そういうサイクルができないと、業界全体として人は増えていかないと思っています。

DPで教えたアニメーターが、そのまま残ってDPで活躍してもらえれば、もちろんうれしいです。でも、それ以上にアニメ業界に残ってくれればいいと思っています。
僕はアニメ業界全体を、一つの大きな会社みたいに考えることがあります。今は別のスタジオに行ったとしても、また何年か後に違う作品で一緒になるかもしれない。技術を持った人が業界に残って、その技術が次の作品や次の世代につながっていくことの方が大切だと思っています。
海外のクリエイターと一緒に作品をつくることについては、どのように考えていますか?
日本のアニメ制作では、海外のアニメーターが原画に参加することは、もう珍しいことではありません。実際、僕が関わっている作品でも、さまざまな国のアニメーターに参加してもらっています。

もちろん、言葉の壁はあります。通訳を入れると、日本人同士で打ち合わせをするよりも時間がかかることもあります。でも、それ以上に大事なのは、その人が何を描けるのかだと思っています。海外にも、本当に上手い人はたくさんいます。国籍ではなく、クリエイターとして一緒にいい作品をつくれるかどうか。それが一番重要だと思います。
一方で、日本のアニメ制作には独自の制作フローがあります。たとえば、原画ではどこまで描くのか、動画に対してどのように指示を入れて渡すのか、タイムシートをどう扱うのか、レイアウトをどう作るのか、といったことです。

海外で個人制作をしてきた人の場合、絵は非常に上手くても、そうした日本式の制作ルールを知らないことがあります。今後、海外クリエイターとより継続的に仕事をしていくのであれば、制作側も工夫していく必要があると思います。
たとえば、「日本のアニメに参加するなら、まずこれを知っておくといいです」という、簡単なマニュアルやガイダンスがあるといいと思います。毎回一から説明するのではなく、基本的なことを共有した上で仕事を始める。そうすれば、クリエイターにとっても制作側にとっても、よりスムーズに仕事ができるようになると思います。
最後に、これからアニメ業界を目指す国内外のクリエイターへメッセージをお願いします。
絵が上手いことは、もちろん大切です。でも、それだけで終わらないでほしいと思っています。
「なぜ、この絵を描いたのか」
「何を表現したいのか」
そこまで考えて、誰かに説明できるようになると、できる仕事はどんどん広がります。
原画から作画監督へ。作画から演出へ。そしてコンテマンや監督へ。
どこまで行くかは、その人次第です。

自分の作品を外に出して、まずは誰かに見つけてもらってください。そして機会があれば、挑戦してみてください。
デイヴィッドプロダクションでも、完成されたクリエイターを探すだけではなく、これから成長していく人を育てることにも、もっと力を入れていきたいと思っています。
いつか、僕たちが教えた人がまた次の世代を教える。そんなふうに、世界中からアニメをつくる人が増えていったら面白いですね。
木村泰大 インタビューイメージ 2